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今、話題の宣伝関係者インタビュー vol5

既存媒体とネットの両方がわかる方のお話を聞きたい!ということで、平塚元明さんにインタビューしてきました。平塚さんが社外役員をつとめる制作プロダクション「パズル」のオフィスにおじゃましたのですが、とても素敵なオフィスでした♪

平塚 元明(ひらつか もとあき)さん  プロフィール

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主な経歴
株式会社平塚元明事務所 代表・マーケティングプランナー
1989年、博報堂入社。マーケティング・プランナーとして、さまざまな業種の広告プランニングを担当。2003年博報堂退社。現在はフリーのプランナーとして、広告やウェブのプランニングを中心に活動中。既存媒体からネットまでを統合したプランニングを得意とする。主な著書に「図解でわかるインターネットマーケティング」「図解でわかるケータイマーケティング」(共著・日本能率協会マネジメントセンター刊)などがある。
★ブログURL: http://omiyage.no-blog.jp/ ★Twitter @omiyage
主な受賞暦
主な作品

インタビュー


【今江】WEBをどう広告に活用すればいいのか、ということでお悩みの宣伝担当者が多いんです。リクエストにお応えして「効果的なインターネットの使い方」ってセミナーを今週開いたのですが、とても盛り上がりまして、WEB活用への手掛かりとなるような情報はまだまだニーズがあることを感じました。平塚さんにはぜひそこらへんのことを伺いたいと思います。まずは今のような活動をされるまでのご経歴を教えていただけますか?

【平塚】1989年に博報堂に入社して、1995年まではマス広告やイベント、SPの総合プランニングをしていました。今日で言うところのストラテジックプランナーです。Windows95の発売で、インターネットの一般への普及が始まった1995年に、WEBが広告会社の仕事になるのかどうかを検証するために、実験的に組織された「博報堂電脳体」に所属しました。以降WEBプロデューサーとしてWEBとマスメディアを統合する広告戦略立案に携わっています。2003年に独立して、今年でフリーになって7年目です。

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【今江】今はどういったお仕事をされているのでしょう?

【平塚】フリーのマーケティングプランナーとして広告会社の仕事を手伝ったり、テレビや新聞、ネット系の媒体社の相談にのったり、制作プロダクションの一員として動いてみたり、広告主に対してのコンサルティングをしたり……と、様々な活動をしています。何と言うか、人材の空白をつないでいる感じです。広告会社も単純に媒体セールスだけでは売れない時代になって困っているし、媒体社も、制作会社も、みんな何からしら困っている。広告関係で何の問題もなくうまくいってます、というところはないですよね。

【今江】宣伝部も困っていますしね。予算はあるのにWEBにどう使ったらいいんだろう、て。何をやったらいいのか答えてくれる人がいないんです。広告会社に相談しても、じゃあスポットやりましょう、て話になるし(笑)あと、広告会社の営業も質が下がってるなって思うんですよ。うちなんかがコンサルに入ってコスト交渉方法の話などするじゃないですか。そうしたらがんばって巻き返せばいいのに、担当が顔を出しもしないらしいんです。テレビ局の悪口を広告主に言って、テレビ局を怒らせたりとか、昔じゃ考えられないことばかりです。僕の知ってるかぎり、広告主の9割が、代理店の自社担当の営業と「二度と会いたくない」って言ってますよ。どうしちゃったんでしょう?
【平塚】うーん、そんなことになってますか。なかなか人が育っていかない、というのはわかるような気もします。携帯電話や電子メールで仕事の体感スピードが上がったこともあって、営業現場はものすごく忙しい。じっくりと腰を据えてOJT、という昔のような環境は難しいですよね。

【今江】体感スピードも上がってるんですけど、なんか細かいことばっかりやって、大きな仕事をしてないんですよ。僕が宣伝部にいたときは、僕が昼ごろに出社したらなぜか広告会社の部長がきてて、宣伝部のメンバーを集めて会議やってるんですよ。で、僕の部下ひとりひとりに仕事の指示を出して、「私が仕切っときましたよ」とか。無茶苦茶だけど、宣伝部にはいりこんでましたね。扱いの小さい仕事だとこんなのやってられないとかって文句言われたりするけど、大きな仕事になるとビシッと決めてくれて、さすがだなあって思ったりもしました。

【平塚】オフィスのセキュリティが厳しくなりましたからね、最近は勝手に中に入れない。昔みたいにアポイント無しでふらっと用もないのに顔をだして……という付き合いができなくなりましたよね。営業が得意先と深くつきあう、ということがやりづらい時代になりましたね。宣伝部もローテーションで人がすぐ替わるので、宣伝一筋という相手と長いつきあいの中で貸し借りや義理人情で、という力学が機能しなくなってます。クリーンではあるけど、あまり良くない意味で広告の仕事が「サラリーマン化」してきたな、と感じます。

【今江】人の質が落ちたということでいくと、最近「プリン体何%」とか、機能をそのままいうだけのCM
が作られるのってなんだと思いますか?いかに欲しくさせるかに広告主はお金を払っているのに、広告主のオリエン内容をもろそのままにCM作るって…?

【平塚】ここ20年くらいの傾向ですね。商品特性は全部言えてるけど、面白くないしグッとこない。

【今江】昔は広告会社が広告主にそんなんじゃ伝わらないって広告主にいったものです。プロに任せろって広告主を説得するのが広告会社の仕事だと思うんですよ。

【平塚】でもそういう面白くないのがコンペで勝ったりするんですよね(苦笑)。広告の仕事が「サラリーマン化」した、ということでいえば、そういうのが「安全策」なんでしょうが。あと、宣伝部と事業部の力関係の変化もありますね。事業部が予算をもっていて、宣伝部は事業部から予算をとってこないといけなくなった。事業部が喜びそうなものを……というわけです。まぁでも、やはり広告会社の責任は大きいですね。そこを突破しなくては、ダメだと思います。

【今江】事業部が予算をもつのって、会社の最適化の観点からはどうなんでしょう。儲かっている事業部は予算が潤沢だけど、これからの部署はどうするのか、とか。スポーツカーの会社だったはずが、軽自動車の宣伝ばっかりしてたりとか(笑)。もはや宣伝の必要のない商品をひたすら宣伝している会社もありますね。まあ事業部制の弊害を会社としても見直して、少しずつゆりもどしがおきているようなのですが、宣伝部にスキルがないので、莫大な予算をもっても調整しきれないなんてことも起こっているようです。
話は変わりますが、平塚さんからみて、WEBをこう使えばいいのに、とかありますか?

【平塚】私がWEBの仕事をはじめて15年。やっとWEBの重要性が広く認識されてきたな、という実感はありますが、ちょっと間違った注目のされかたをしてるところもありますよね。例えば「バズ」とかね(笑)。もちろんおもしろいものもあるけど、世の中へのインパクトでいったらまだまだ限定的、たかだか数万人の影響範囲だったりするわけです。はしゃぐのはいいけど、それでマス広告は終わったね、っていう単線の議論はどうなの、と。こんなこというと反動的かもしれないんですけど(笑)。

【今江】そうですよね。1600万世帯にどんと届くのが広告ですよ。WEBってどんなに多くても10万とかだし、消費者が能動的にならないと届かない。広告とは、広く告げることなんで、WEBは、広告とはいえないと思っているのですが・・・

【平塚】WEBはいわゆる「広告」的機能が本質ではないでしょう。広告って、「物欲をかきたてる」もの。今のWEBは物欲をかきたてられたあとに自ら調べてたどっていく店舗や窓口に近い。さっきの「バズ」の話でいえば、店舗や窓口に用があって人が来てるのに、そこでわざわざチンドン屋を出してるような感じの企画が多い。邪魔だからどいてくれっていう(笑)。

【今江】おっしゃるとおりです!こんなことをWEBマーケティングをしている人に言うと怒られるのかなと思っていましたが・・・

【平塚】WEBって何かの代替をするものじゃないと思うんです。マス広告の代わりとか、SPの代わりとか、営業機能の代わり……という発想じゃうまく使えない。企業のそうしたマーケティングプロセスの各段階をつないでいく線だと思うんです。これまでバラバラの担当がやってた仕事をつないでいくのがWEBの仕事の本質。広告会社が従来のマス広告が売れないからっていうので、WEBでバズを……という具合に考えてるとなかなかしんどい。

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【今江】WEBがマーケティングプロセス全体をつないでいく、という発想で、広告主と協働できるプランナーが必要なんですが、なかなかいないんですよね。

【平塚】広告会社だけでは無理。将来的には基幹システムをやってるシステムインテグレーターとか、プロセスの各段階を担っているプレイヤーを束ねていかないと実現できない仕事も増えていきます。ゼネコンの建設現場みたいになっていくんじゃないですかね。どこがアタマをとるかはその都度違うけど、いろんなプレイヤーがジョイントでプロジェクトを組んでいく感じ。


【今江】WEBの広告市場がのびてるっていうけど、どうなんでしょうね?

【平塚】ネット広告が新聞広告をぬいた、とか騒がれてますが、ネット広告を専業で扱ってる代理店や、ネット系の媒体社もそれぞれ危機感をもっていますよ。PVやCTRの数字だけもっていって広告枠をセールスしても、マーケティングプロセスにどう寄与するのかというストーリーが語れないと、これからは単純に枠商売じゃマズイ、と。

【今江】そうなんですよ。ネット系の会社って、数字やシステムの話ばっかりされて、何が実現できるのかが分からない。

【平塚】ネットやってれば、デジタルやってれば大丈夫。マスでアナログだとヤバイ。こういう恐ろしく単純な二元論で考えてると痛い目に合いますよね。

【今江】いや、今日はほんとうにWEBに対してぼくがこれまで考えてきたことがやっぱりまちがってなかったとわかって、うれしいです。ぜひセミナーとか、いっしょに仕事をしたいですね。これからもよろしくお願いします。


【満木の感想】
インタビュー冒頭に、おいくつですか?というやりとりがありました。平塚さんが43歳、今江が49歳。この年齢のやりとりのあとに、「昔の広告の仕事は…」という話題がたいへん盛り上がりました(だいぶ割愛しましたが…)。どの時代から広告に携わっていたかが、広告の話をするときにはキーになることを発見しました。広告のいいときを知っているからこそ今の広告業界にはがゆさを感じている、という思いがあふれ、WEBのお話を伺うつもりが、広告業界の今後、といったお話になりました。書けなかったお話もたくさん(!)あります。聞いてみたい!という方はシステムアイまでどうぞご連絡を。