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今、話題の宣伝関係者インタビュー vol2

第2回は日本の広告界を代表するコピーライター仲畑貴志さんの登場です!

仲畑貴志(なかはたたかし)さん  プロフィール

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主な経歴
1947年8月 京都市生まれ 
クリエイティブディレクター/コピーライター
ナショナル宣伝研究所、サン・アド勤務、仲畑広告制作所・ドラゴン東京主宰を経て、2008年8月 考えを売る会社「株式会社ナカハタ」を電通と共同出資にて設立。広告戦略・企画・マーケティング戦略・クリエイティブ開発を専門とする。
数々の広告キャンペーンをてがけ、日本の広告界を代表するコピーライター。
また新聞紙上で川柳の選者を務め、その秀逸作品にエッセイを加えた「万能川柳」シリーズや、講談社より「この骨董がアナタです」という骨董にまつわるエッセイ集を出版し、多岐にわたり活躍。
主な受賞暦
カンヌ国際広告映画祭金賞・TCC賞・ADC賞・朝日広告賞・毎日広告デザイン賞、他多数受賞。
主な作品
「ココロも満タンに、コスモ石油。」「目のつけどころが、シャープでしょ。」「反省だけなら猿でもできる。」など代表作多数。

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【今江】宣伝部の人間は、クリエーターっていうだけで近よりがたく感じていたりするのですが、仲畑さんのような大物だとなおさらだと思うんですよ。きっと料金も高いんだろうなぁ、なんて。

【仲畑】そんなことないですよ。この前なんて30万くらいでやっちゃいましたよ。若い宣伝部の人が飛び込みで依頼してきたりもしますよ。コスモ石油の小宮山さんなんかもそうです。うれしいですよねー。ぼくは商品はなんでもいいんですよ。本気で売りたい、自分の会社を良くしたいという思いをもってるクライアントと仕事をやりたいんです。

【今江】仲畑さんにとっていい宣伝部とか、逆に困っちゃう宣伝部を教えてもらえますか?

【仲畑】宣伝部は「防波堤」だと思うんですよ。ぼくはシュートするギリギリまで考えるタイプで、直前までより効果的な表現を追及します。特に初めてお付き合いするクライアントだと、一発目から長打をとばそうと思ってますから。そこで稟議が通っちゃったからもう変えられません、ていうのは困ります。宣伝部の人には社内とりまとめに力を発揮してもらいたいですね。仕事がしやすいのは「本気で売る気がある人」です。あくまでも売るための広告なのであって、売るための一番いい手を考えるのが仕事です。宣伝部の人が「表現するわたし」になっちゃって「感性」を連呼するようだとダメですね。合理的であるべきと思います。

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【今江】オリエンでクライアントから方向性まで提示されるのはどう感じますか?

【仲畑】方向が正当ならいいですが、間違ってると修正にパワーがかかりますね。マーケティングってクリエイティブなんですよ。例えば、セゾンカードでおじいちゃんにステテコをはかせた際に、女性ホルダーが多いからちょっとステテコは……という意見がありました。一見正しいし、とても論理的な指摘です。でも、ステテコのほうがチャーミングじゃないですか?じっさいステテコで効果がありました。プロですから、物議をかもしそうなときは要求されなくても安全策も考えて、過激と穏和の両方押さえておくようにはしますけど。

【今江】クライアントがオリエンで伝えられていないところに訴求ポイントが存在していて、クリエーターが探り当てることがありますが、どうしてそういうことが起きるのでしょう?

【仲畑】クライアントにとっては当然だと思っていることが、消費者やぼくらにとっては当然じゃなかったりするんです。また、クライアントが自分では気付かずに素晴しいコピーを言っていて、いただいちゃったりすることが良くありますよ(笑)特に開発者の人の心に内在大きな思いがあって、でも表現が不自由がゆえにざらつきがあって、すごいコトバを発せられることがあります。クライアントが長所と思っていることが必ずしも訴求ポイントにはならず、こんなのは当たり前という特性が価値を持つことだってあります。商品の機能や内容を説明した広告を作ろうとする傾向がありますが、今のように商品格差がない時代で、いくら品質を訴えても突破できるとは思いません。

【今江】まさに今こそ広告の出番ですよね!なのにどうして小さな質の差を追いかけるものばかりで、面白い広告が少ないのでしょう?

【仲畑】経済性の影響でしょうね。企業が守りに入ったために出っ張ったアプローチが通りにくくなって、とりあえず商品の特性を言っていれば安心、と。そんなことをしていると売れないスパイラルに陥るだけで……もっと本音で話し合いたいですね。AV機器のCMを長期にわたって作っていたときの話です。CMで訴求できるような機能面のヴァージョンアップが無いことがあって、「それなら、広告を信用していただいて、ここはひとつ広告にまかせていただきたい」とお願いして、自由に広告をこさえた結果、機能訴求表現よりも売上げがものすごく上がったんです。広告で爆発したんです。おもしろいでしょう?クリエーターのスキルや能力をオンして情報価値をつけた成果です。

【今江】啓蒙がんばります(笑)。プレゼンをする側から、クライアントがプレゼンを受けるにあたりアドバイスをするとしたら?

【仲畑】むやみに競合をかけないことですね。クリエーターが競合をとるための広告作りをしますから、ターゲットが消費者ではなくクライアントになってしまいます。たとえば、TOTOではもう6人の社長とお付き合いするほど長くやってきました。そうすると今こさえている広告だけに注視するだけでなく、次の表現までにらみながら長期的に考えることができます。毎回競合をかけるのは意味がありません。いいクリエーターがいたら少し長く付き合うことですね。それから、提案者から説明を聞かないことです。表現だけ見て決めればいいんです。消費者は広告そのものしか見ないんですから。表現の論理は、社内を通すために使うのはいいですが、プレゼンのテクニックで決めるのは危険です。

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【今江】プレゼンに代理店の人とかずらーーーーっと座っていて、誰にむかって話せばいいのかわからない、というクライアントの声をよく聞きます。クリエーティブディレクターなのかプロデューサーなのか……実際誰が作っているのでしょう?


【仲畑】いろいろだと思いますが、本来はクリエーティブディレクターでしょうね。

【今江】仲畑さんは現場に足を運びますか?クライアントが立ち会ったり口を出すことについてはどう思いますか?

【仲畑】現場に行く必要があるのはトラブルがあったときでしょうね。例えば遠くで撮影していて雨が降り続いた。撮影がのびると莫大なコストがかかる。そんなときにアイデアをその場で出して、納得のいくものを提案することができるのはやはりクリエーティブディレクターですよね。クライアントが立ち会う意味は、後でNOが出た時の保険でしょうね。迷ったらいろんなパターンを押さえておくようにはしますが、やはり商品カットなどディテールでクライアントの意見をもらったほうがいいところもありますから。

【今江】仲畑さんが今後取り組みたい仕事を教えていただけますか?

【仲畑】とにかく企業にとっていいことを提案できる関係でしごとをしたいですね。たとえ制作費がなくても、それをアイデアで解決する。ぼくは知恵で解決するのが快感なんです。2008年8月に株式会社ナカハタを立ち上げて1年ちょっとになりますが、いきなり「良いコピー」を考えるのではなく、企業にとって「良いこと」をまず考える。そしてそれをカタチにしていきたいと思います。

【満木の感想】
仲畑さんといえば広告界の超大物。少し緊張しておじゃましたのですが、偉ぶったところがなくとても気さくな方でした。仲畑さんの「いいことをしたい」気持ちが伝染して、話を聞いているわたしもなんだかワクワクしました。「企業にとっていいことをしたい」という仲畑さんの本気に応えられる「本気で売りたい」宣伝部の方、思い切って株式会社ナカハタのドアをノックしてみてはいかがでしょう?

                                  (取材・文 満木葉子)