業界人
インタビュー

今、話題の宣伝関係者インタビュー vol1

記念すべき第1回はサトー克也さんです。CMから感じる温かさや優しさは、作り手であるサトーさんのお人柄がそのまま反映されているのを実感するインタビューでした。

サトー克也(さとうかつや)さん  プロフィール

写真
主な経歴
1987年 慶応義塾大学法学部卒業
1987年 第一企画株式会社(現株式会社アサツーディ・ケイ)入社
2007年12月 さらなる活動フィールドを広げるため、自身のオフィス、《ダイコク》を設立
第一企画入社後、アサツーディ・ケイを経て、インパクトある広告表現で数々の話題作を世に送りこむ。近年は、その企業の持っているポテンシャルをどう生活者と結びつけるかなどクリエイティブディレクターにとどまらず「表現コンサルタント」的スタンスで臨んでいる。その上、演出家としても各賞を受賞しており、職人的クリエーターである。
主な受賞暦
・2009アドフェスト(アジア最大の広告賞)シルバー&ロータス・ルーツ賞
 (日立マクセル「ずっとずっと。正調弥三郎節」)
・2007年度ACCグランプリ・総務大臣賞、ACCジャーナリスト賞
 (日立マクセル「ずっとずっと。新留小学校」)
・カンヌ国際広告祭銀賞 (日立マクセル「タイムカプセルプロジェクト」)
・ACC賞 (日清食品「出前一丁」3年連続受賞、白子「お茶漬けサラサラ」他)
・電通賞優秀作品賞 (日立マクセル「大人になったジブンへ」他)
・消費者のためになった広告コンクール金賞 (日立マクセル「大人になったジブンへ」)
・ギャラクシー賞
 (日立マクセル「大人になったジブンへ」 パイオニア「PURE VISION」)
・IBA
 (日清食品「どん兵衛」、パイオニア「PURE VISION」、
  久光製薬「フレシングクリーム」)
・ロンドン国際広告賞
 (日清食品「どん兵衛」、日立マクセル「ずっと、ずっと。大関栃東」)
 他多数受賞
主な作品
・コスモ石油
 「ココロも満タンに宣言」2007?2009
  「コスモ・ザ・カード・オーパス戻ってくる幸せ」
・日清食品
 「出前一丁」「どん兵衛」「カップヌードル」
・日立マクセル
 「ずっとずっと。新留小学校」「大人になったジブンへ」
・三井不動産販売
 「三井のリハウス、リハウスで話そう」
 「三井のリパーク、ちょっと右より」
・東京電力  「TEPCOひかり、テプコひかりに決めた唄」
・大塚製薬
 「カロリーメイトゼリー本気の夏」
・第一三共ヘルスケア
 「パデックス フェルビナク35 7倍のしあわせ」
・パイオニア
 「PURE VISION、色の国」
・キリンビール
 「春咲き生」「ビール工場できたて出荷」

インタビュー

写真


【今江】そもそもクリエーターになろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

【サトー】「大学生の時に角川書店の『バラエティ』という雑誌のライターをしていて、動くものをやってみたいと考えるようになりました。
映画とかよりも短いものほうが自分にはあっているように思い、
CMクリエーターを志しました。」

【今江】それで第一企画に入社されて、かれこれ22年。長いですねー!22年の間に作風の変化やご自身の変化はありましたか?

【サトー】「ラジオCMからスタートして、入社2年目でACCで3本受賞しました。
テレビでは、日清食品の出前一丁など
『ギャグもの』とよばれるような作風のものを作るようになりました。」

【今江】作風が変わるきっかけはなんだったんですか?

【サトー】「船井幸雄さんと高木善之さんの環境問題についての講演で、
解決には何よりも『人の意識が変わることが大切』とおっしゃっているのを聞いて、
見てくれた人が気持ち良くなったり、笑ってくれたり人の意識にポジティブな影響を与えるような
CMを作りたいと思うようになりました。
CMって土足で人の家に入るようなところがあるじゃないですか?せめてもの礼儀かなと。
そこから『人ってなんだ』と心理学や古武道の精神など人間への洞察力を高めるための勉強を
するようになったんです」

写真


【今江】今のテーマは何ですか?

【サトー】「2006年くらいから明確になったのですが
『ホントの自分を生きてほしい』というのがテーマです。
人の目線ではなく自分基準で自分を裏切らない生き方をしようということを伝えていきたいです。
広告的信条は『その商品、その企業は、いかに人を幸せにできるか?!』です。」

【今江】でも、クライアントからオリエンを受けて、
この商品では作るのが難しいと思ったことはありませんか?

【サトー】「正直ないとは言いません。でも必要のない花は咲きません。
どんな商品でも絶対何かの役に立つはずで、人を幸せにする接点を見出して
カタチにすることに自分が関わる意味があると思っています。」

【今江】なるほどー。ちなみにサトーさんがオリエンで聞きたいことってどんなことですか?

【サトー】「僕がオリエンで聞きたいのは『この商品を買ってくれた人をいかに幸せにできるか?』ですね。
メーカーさんの目的は作ったもので人を幸せにすることだと思うんです。
ヒットしたり売れたりするのは結果であって、目的ではないというのが僕の考えです。
ですから市場性や開発背景だけではなく、商品とそれを使う人をどうリンクさせるのかという
意思を聞きたいですね。
さらに僕が、クライアントさん自身も気づいていない、
その商品が“世の中の人を幸せにするポテンシャル”を引き出したいと思います。」

写真


【今江】優秀だと思う宣伝広告担当者とはどんな人ですか?

【サトー】「企画を通せるということですね。
例えば、一度決まった企画が、上司の要望でタレントを変えたいとか、後にクライアント社内の都合でねじまげられるのは辛いですね。
企画は思いや勢いがかたちになったものです。
タレントという企画のパーツを変えたことによって、伝えようとしていたメッセージが
伝わらなくなってしまうので、企画そのものを見直す必要があります。
ですから提案から試写までのプレゼンに決定権者がいることはとても重要です。
もし上司の説得が難しいのであれば、クリエイターに説明を依頼するとか、
クリエイターをうまく活用してくれたらいいと思いますよ。」

【今江】クリエイターさんにそんなお願いをするなんてと恐縮してしまう担当者さんも
たくさんいると思いますが、企画を通すため、ですよね。
作品に口出しをすることをタブーのように感じている担当者さんも多いと聞きますが
いかがですか?

【サトー】「CMクリエイティブというのは集団創造です。
クライアントから照明部までみんなでひとつのチームで、
チームワークを作るのもクリエイティブディレクターの仕事です。
現場の空気はフィルムに写るんですよ。
クリエイティブなことはわからないから・・・など遠慮をする必要はありません。
作品を見るのはCMの専門家ではなく素人なわけですし。」

【今江】ここでも遠慮は無用ということですね。
サトーさんがこれまでで会心のできだったと思う作品を教えていただけますか?

【サトー】「いろいろありますが……パイオニア「PURE VISION」でしょうか。
ワクワクして、現場も楽しくて、仕事が終わらなければいいのにと思ったほどです。
『色=個性を取り戻そう』というテーマが自分の伝えたいことそのもので、
CMに思いをのせることができたのがよかったのだと思います」

【今江】広告とクリエイターのテーマが一致していい作品ができたということですね。

【サトー】「クリエイターというのはブラックボックスのようなもので、
クライアントからいただいたお題を咀嚼してアウトプットするわけです。
クリエイターの個性が咀嚼力にあたり、世の中や商品をどう捉えるか、
『人間力』」が問われるわけです。」

【今江】それで先に伺った人間への洞察力を高めるための勉強をしているのですね。
どんな人間性・個性をもったクリエイターさんに依頼するかで
ぜんぜんちがった作品になってしまいますね。
そう考えると、宣伝広告担当者はテーマと一致するクリエイターさんを
ちゃんと作品ごとに選定するべきですね。

さて、サトーさんは今後こんな作品を作りたいとかってありますか?

【サトー】「特にこういう作品を作りたいというよりは、
ご縁のあった仕事をひとつひとつ大切にしていきたいですね。
絵本、映像詩、アニメなど表現のフィールドをどんどん広げていきたいと思います。」

【満木の感想】
サトーさんの描いた絵本、ぜひ読んでみたいです!
長時間にわたるインタビューありがとうございました。
サトーさんの作品がいっぱい増えるとCMを見るのが楽しくなりますね。
サトーさんにお仕事を依頼したい!という方はぜひシステムアイまでご連絡ください。


                                  (取材・文 満木葉子)